COLUMN
2025年、学校ネットワーク回線はどう変わる?
文科省が描くGIGAスクール構想の次なる一手
2025年6月12日
近年、GIGAスクールや校務DXによって学校のIT環境は急速に変化しています。本コラムではICTを中心とした教育政策の動向を考察していきます。
政策と聞くとニュースで断片的に知ることはあっても、全てを窺い知ることが難しいと思われがちですが、所管官庁のホームページに公開されてり、誰でもアクセスできるようになっています。
政策決定の過程を覗くことで、児童生徒や先生方がこれからどのような環境に身を置くことになるのか、その未来の断片を窺い知ることができます。第1回は、学校のネットワーク回線について政策決定の「上流」にあたる審議会の資料や公開ドキュメント、政府統計を交えて解説します。
その前に、我が国における教育政策の決定過程について簡単に解説します。おおまかに以下のような政策のPDCAサイクルが循環しています。
(1)文部科学省の諮問機関である中央教育審議会(中教審)や有識者会議にて、課題認識と政策必要性を検討する。
(2)文部科学省、こども家庭庁等の関係省庁にて政策を立案し、審議会に諮る。
(3)関係省庁、業界団体、自治体等のステークホルダーが政策実施の具体について互いに調整する。
(4)内閣が「経済財政運営と改革の基本方針」(通称 骨太の方針)として閣議決定する。
(5)国会が審議を経て法制化する。
(6)関係省庁や自治体が政策を実施し、その結果を評価する。

(図 政策のPDCAサイクル)
上記に挙げた1、2、4,5は公開されております。審議会のなかに政策課題ごとに会議体がもうけられ、構成員、論議に用いた資料、議事録が文部科学省のホームページに掲載されています。また審議会や分科会の会議はYouTube等で中継されます。閣議決定は内閣府のホームページに掲載されます。国会審議の様子は衆参議院のホームページやYouTubeで視聴することができます。
2019年から進められてきたGIGAスクール構想の取り組みは、児童生徒1人に1台のコンピュータと学校に高速ネットワークを整備することを骨子としています。それらはすでに全国の小中学校にて実現されています。しかし、課題も浮上しており、中教審の初等中等教育分科会のなかに設置された「次期ICT環境整備方針の在り方ワーキンググループ」にて討論され、2024年7月にとりまとめが公表されています。
とくに課題として重視されたのがネットワーク回線の速度です。児童生徒にPCが配布されたことで、インターネットを活用した授業が行われるようになると、回線が逼迫し、コンテンツの再生・表示が遅延する事象が見受けられるようになりました。
文科省では学校規模ごとに「当面の推奨帯域」を設定しており、児童生徒1人あたり最低でも1.3Mbps以上(※1)の実効速度が必要と定めています。しかし、2023年11月に調査したところ、その推奨帯域を満たす学校は全体2割程度であることが判明しました。(2024年4月「学校のネットワークの現状について」より)
学校で契約しているインターネット回線は速いものでも、理論値で2Gbps、実効最大が600Mbps程度(※2)となり、時間帯等によってはさらに遅くなりますので、一般家庭とそう変わらない性能です。それを教職員と児童生徒の数百人が利用することを考えると性能が不足することは想像に難くありません。かといってギャランティ(帯域保証)型の回線契約はベストエフォート型の何倍もの価格となるため学校予算で賄うには現実的ではありません。回線帯域の調査は毎年実施されており、政府統計「学校における教育の情報化の実態等に関する調査」として公開されています。また、学校向け回線提供事業者や参考価格は「教育DXサービスカタログ(通信回線)」にて検索することができます。
※1 小学校1校あたりの児童数316名(2024学校基本調査 全国平均)とした場合
※2 回線事業者によって実効速度や条件は異なります

(図 学校ネットワークの帯域分配)
2024年4月に、文部科学省は各自治体に対してまず学校ネットワークの現状を把握し、改善するための手順「学校のネットワーク改善ガイドブック」を公開しています。そのなかではインターネット利用で支障がある場合は、その原因の切り分けと特定=アセスメントを行ない、対策を立案することとしています。
文科省は令和7年度中に全ての学校で「当面の推奨帯域」を満たすことを目指すとしておりますが、インターネット回線がボトルネックとなっている場合は、アセスメントや機器の更新を行っても改善効果が乏しいものと推測されています。そのため、2024年8月には文科相、総務相、デジタル大臣が連名でネットワーク回線業者の業界団体に対して協力要請を行って、広帯域の回線契約を提供するなど求めています。2025年2月に行われた学校ネットワーク自治体ピッチでは、回線事業者が対応したサービスを発表するなどしており、改善していくことも見込まれています。
文科省が推奨帯域に「当面の」と付したのは、学習者用デジタル教科書本格導入や全国学力・学習状況調査CBT化など制度の変化や技術の進展によって必要な回線帯域がさらに変動することを踏まえてのことです。実際、学校の働き方改革の一貫として校務DXも進められていますが、出欠連絡をはじめとした内外の情報共有のオンライン化・クラウド化は道半ばであり、これから活用が進むことが見込まれます。(2025年3月25日 文部科学省YouTubeチャンネル「すぐにできる校務DX GIGAスクール構想の下での校務DXチェックリスト」より)
回線帯域は有限であり、学校にとって回線契約はコストのかかる設備です。学校は継続的にアセスメントを行い、将来を踏まえた機器更新を計画することが求められています。

(図 広がる学校におけるインターネットの用途)
本日は学校のネットワーク回線という問題にフォーカスして政策動向をかいつまんで述べてきましたが、文中の各リンクを開いていただければ、議事録や資料から、有識者がどのような思いを持って議論してきたか、将来の学校の在り方の一部を垣間見ることができます。
こうしたネットワークの課題に対して、現場で今すぐにできる対策の一つとして注目されているのが「キャッシュサーバー」の導入です。
富士ソフトでは、デジタル教科書等のコンテンツを校内にキャッシュ(一時保存)することで、インターネット回線にかかる負荷を軽減し、推奨帯域に満たない学校のネットワーク環境でも快適に学習コンテンツを利用できるようにするものです。さらに、学習コンテンツだけでなく、OSアップデート情報などもキャッシュすることが可能で、ネットワーク全体の効率化に貢献します。
ネットワーク回線の増強がすぐには難しい学校現場において、こうしたキャッシュサーバーの活用は、現実的かつ効果的なソリューションとして期待されています。
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