ICT教育の9つのメリットとデメリット・運用でつまずく要因と解決策

2018年9月20日

  • 教育ICT

1. はじめに

昭和60年代から学校への学習用パソコンの導入が始まり、平成6年度からパソコンルーム(PC教室)が整備され、現在ではほぼすべての学校にパソコンが導入されています。生徒のデスクに各1台のパソコン、という光景もめずらしくなくなりました。職員室でも教務用パソコンの整備が進んでいます。
文部科学省では、平成26年より各学校およびクラスの授業において、ICT(Information and Communication Technology=情報通信技術)を用いた取り組みを推進しています。
最近はタブレットPCの導入ペースが加速しつつあります。しかし、タブレット、電子黒板、パソコンなどのICTを使うことのメリットは、使う側の教師、生徒、保護者にはどのように認識されているでしょうか。推進する側との認識の差はないのでしょうか。
教育現場では、まだ納得感が持てない方も少なくありません。

そんな中、2019年12月に文部科学省が「GIGAスクール構想」を公表し、児童生徒1人1台端末の整備に向けて大型の補助金が用意されることになりました。この「GIGAスクール構想」については、以下のコラムを参照ください。
▼GIGAスクール構想とみらいスクールステーションの関係性をご紹介

2. 教育ICTの目的とメリット・デメリット

なぜ社会ではこれだけICTが浸透しているのでしょうか。今やICTがなければ立ちいかない製品、サービスや公的機関はごまんとあり、交通も電力もハンバーガーチェーン店もみなそうです。家庭でもクルマやテレビ、冷蔵庫や洗濯機などの白物家電も中でICTが機能を動かしています。ICTは今や社会にある組織や家庭でさまざまなことを実現するための基礎であり、人間社会がもてる能力を大幅に拡張しているのです。それでいて加速度的に進化しています。
では学校にICTが入る目的は何か、そしてICTを駆使することでどのようなメリットが生まれるのか。 例えば以下のことが考えられます。

① 教師が授業で使用する教材の共有、加工、再利用
② 紙の教材では表現が難しい、映像やアニメーションによる視聴覚的な教材表現
③ 授業内容を子ども自身が理解できるまで繰り返し学習できる環境の提供(反復学習)
④ 子どもの個性や適性、進度に応じた教材と学習環境の提供(学びの個別化)
⑤ 子ども自身で何度も試行錯誤や推敲しやすい環境の提供(創造的活動)
⑥ ICT基礎スキルの習得(電源入切、キー入力、アプリ起動、保存などのICT基礎を読み書きと同様とする考え方)
⑦ 大量の情報から価値ある情報を導き出したり、自分の発想と組合せて新しいものを生み出す力の習得(ICT応用スキル、情報スキルの習得)
⑧ 子どもたち自身の経験、学習、学校活動による成果を自分の財産として蓄積・整理・活用するスキルの習得
⑨ 教職員の教務・校務の効率化

しかし「メリットどころか余計な仕事が増えた」と、ICTにデメリットを感じる方がいらっしゃるのも事実です。ICTに対する期待を高める一方で、現実との間に格差を感じている人がいることは否めません。
ICTは見合う効果を見込んで導入すべきものです。メリットが実感できないということは、整備に何かしらの問題があるのかもしれません。
実際、学校ではどうなのでしょう。
上記①〜⑨について解説してみます。

①今やプリントは職員室のパソコンで作る先生が多いと思いますし、そのデータは再利用ができ必要なら修正することもできます。 学校や教育委員会の共有サーバに入れて他の先生と共有されている方も多いのではないでしょうか。教材や資料の準備を作る際 にICTをメリットと捉える先生は多いと思います。

②デジタル教科書やNHK for Schoolのコンテンツを生徒に提示する機会は多いでしょう。しかしそれだけで生徒の学力が簡単に上が るわけではないし、得意な方を別にすると機器の不具合が起こる不安や管理の手間ががデメリットとなり、メリットを上回って いるのではないでしょうか。

①と②は、これまで職員室と教室で多く行われてきたICTの使われ方ですが、子どもたちにとってはどうでしょうか。間接的にその恩恵を享受しているものの、もっと直接的にICTの恩恵を受けるべきではないでしょうか。

②から⑧までについては基本的に子どもたちが対象であり、学習者端末の普及がカギになります。教育ICTのメリットが子どもたちのためにあるべき、という認識は、まだ多くの先生や教委の方に浸透していないかもしれません。多額の税金または保護者が支払う学費収入からの支出で実施されるICT整備は、子どもたちに今後の社会で生き抜く力をつけ、社会をリードしていく力をつけることに向けるべきではないでしょうか。

学習者端末は学習者自身が主体的に学び、分かることで活動し、協働するためのツールとして自在に活用し、将来の社会における自分の思考力、表現力、判断力を自分の身一つの枠から大幅に拡張・強化するもので、学習者端末の整備はそのために進められようとしているのです。

目的・メリット③から⑧について少し掘り下げてみましょう。
③④は伝統的なドリルや個別学習が学習者端末で効率的に行えるもので、端末整備が進んでいる一部の学校ではモジュール学習で活用されています。この③④は個人に応じた知識・技能の定着に寄与するもので、従来の受験向けの学習を効率化します。
⑤は子どもが作文や図表などのアウトプットを作成するうえで、ICTによる部分修正を容易にし、紙では難しい大規模な変更をも可能にします。また文や図形要素の再利用のしやすさが推敲や試行錯誤を大きく効率化し、思考、判断、表現にかけられる時間を増やすことができます。そしてアウトプットの外観上の完成度を大きく向上できることも意欲向上に繋がり、楽しいと感じながら学習できます。手書きで「書く力」は大切ですが、例えば作文を推敲するのにも、子どもが熟考し、高い完成度を目指して作業に取り組むツールとしてICT端末は最適です。社会ではすでに筆記よりコンピュータ入力がほとんどですし、これは現在でも社会人が日々実践していることです。

⑥⑦⑧は、子どもが成人したときに情報社会に適応して暮らしていくための最低限の基礎だけでなく、その情報社会で通用する能力と、そこで新しいものを提案できる力、そのために自分が扱う数多の自分に関わる情報資源(インプット、アウトプット、自身に纏わる記録などのデータストレージ)の管理や他者との情報共有をコントロールする能力を育てることになります。

3. 本当に学校や学習者に寄与する整備とその課題は?

前述のように「ICT整備は学習者のためである」と書くのは簡単ですが、教育現場では簡単にその通りにいかないのが現実です。現場では以下の課題がよく指摘されています。

① 予算不足で十分な数の学習者用端末を整備できない
② 端末の数が多いと故障などトラブルの頻度や不具合率が上がって対応に手が取られ、授業が停滞する
③ 授業中に子どもが端末操作に手間取って授業が停滞する
④ 端末をカートから出して生徒に配り、起動をさせるのに時間がかかる
⑤ 学習者端末のOSやアプリのアップデートが大変
⑥ 子どもが端末の環境を変えてしまう
⑦ 端末の性能が低すぎてデジタル教科書の動作が遅すぎる
⑧ WiFi環境の整備が十分ではなく安定しない
⑨ ネットリスク(インターネットを使うことにより生じるリスク)と遊興に走る心配

子どもたちが主体で使うといってもこれだけの課題(デメリット)があります。ICTを今後駆使する上で、どう対応していけばいいのでしょうか。①⑧⑨を別にすると管理上の問題が多いようです。ICT支援員さんを入れればよいのでしょうか?

そもそもこれら問題を複雑にしている要因が何なのかを調べると、どうあるべきか、どうすべきかが見えてきます。

・同じ時間で数十人がICT端末を一斉に使う場面を持つというのに、使用者がほとんどICTの知見がない前提

学習者が主体で端末を使うなら、学習者自身が端末に馴染み親しんで掌握できるようにし、ある程度の不具合は自己解決できるようにしていくべき。そうすれば先生方の不具合に対する不安と負荷は大幅に軽減されるはず。
企業や家庭であれば段階的に慣れていくものですが、学校で間欠的に使っているだけでは慣れようもありません。学習者の日常ツールになるべきなのです。
ここでICT支援員がいつまでもみなやってくれるようではそれこそ理解は深まりません。

・デジタル教材の利用、ネット情報の利用、アウトプット(成果物)作成と保存が目的であるのに対し、それらとは直接は関係ないOS更新やセキュリティ対策が求められる近年のICT端末はOSやアプリケーションが必要以上に肥大化し、素人の手に負えなかったり、高スペックで高額なハードウェアが求められたりします。適切な機能のみに絞ることで機器のスペックを下げ、大袈裟なアップデートが利用目的を阻害しないようなコンセプトの機器が望ましいでしょう。

・教委または学校で多様なアプリケーションを選択できることが不用意に間口を広げ、授業で使う環境が多様化しすぎたり属人化する

学校で端末を使う目的は前述のようにデジタル教材、ネット情報、アウトプット作成ですが、特殊なアプリケーションの経験は使えない環境に変わった瞬間に使えない知識になってしまう場合があります。学校の端末で経験したことが学校外や社会に出ても通用するように、Officeドキュメントなどの汎用的なものをメインに使いながら他のものも経験できることが望ましいと考えられます(ただし商業科や工業科など専門分野では専門なりのアプリケーションが不可欠でしょうが)。

4. 課題の解決策と最近の教育ICTトレンド

解決策は、前述したように以下になります。
・子どもたち自身がICT端末に親しんで馴染むようにし、日常で起こるある程度のことは自己解決できるようにさせる
・学習者端末はソフト的に軽量な端末を選択する
・授業や提出物での端末による成果物作成は、社会でスタンダードなOfficeアプリケーションをメインに据える

子どもに自己解決力をつけるには、学習者端末を子どもの標準ツールにする必要があります。現在でも高校では電子辞書が標準ツールになっていますが、そういった位置付けのものになるべきでしょう。また、学習者端末のソフト的な軽量さも重要です。
学習者端末についてはこのところChromebookがいろんなところで話題になってきており、米国では2017年3月時点ですでに学校の学習者端末の約60%のシェアを持っていることが業界ではよく知られています。
ChromebookはChromeブラウザ以外の機能がほとんどなく、アプリケーションはブラウザ上で動作するG Suite for Educationとインターネット上のWebサイトがすべてですが(Androidアプリも使えますがここでは置いておきます)、Office系機能を含むG Suiteで学校で作成するほとんどのアウトプットには事足りるといえます。

また教材提示用の端末ではありますが、軽量で無駄がないものとしては当社のみらいスクールステーションも同様です。ネットワークを介して電子黒板やデジタルテレビ、プロジェクターに接続し、家庭で使い慣れたリモコンまたは電子黒板のタッチ入力で簡単に操作できるため、インターネット機器の苦手な教員でもすぐに使いこなすことができます。可能な限り不要なOS更新やアプリケーション更新による管理負荷を排除し、電源ON時の起動も高速で授業進行がスムーズに行えるよう配慮されています。
みらいスクールは大型モニターへのリモコンでの教材呼び出しのほか、iPad/iPhoneやWindows端末などの画面転送もでき、教材の提示が非常に簡単です。また、書いたら消す板書と違い、タブレットやディスプレイ(電子黒板)上に書いたものを保存しておくことができるため、見たいときにいつでも資料を呼び出すことが可能。授業だけでなく、緊急時などの校内連絡にも応用できます。

今後、みらいスクール製品はChromebookとの親和性を深めつつ、教材提示機器の枠を超えた製品・サービス展開を進めます。


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