いまさら聞けないICT教育とは!?
現状と課題、必要性や効果を徹底解説

2018年11月6日

  • 教育ICT

 最近、テレビCMや情報番組でスマートスピーカーやAIロボットが盛んに取り上げられるようになりました。音声対話型のAIアシスタントという技術領域で、スピーカーの形をしたロボットに話しかけると、ユーザーに代わって「調べ物をして教えてくれる」、「音楽を流してくれる」、「インターネット通販で買い物をしてくれる」、「部屋の明かりを調節してくれる」など、利用者の暮らしや行動を手助けしてくれる場面が象徴的に表現されています。

“ロボットでできることはロボットに任せて、ロボットにできないことを人間がやる。人間とICTが融合する便利な社会”

 そんなかつて思い描いていた未来の社会がついに始まった、と実感された方も少なくないのではないでしょうか。

「今後10年から20年の間に現在アメリカにある職業の47%がコンピューターに取って代わられると予想される。(マイケル・A・オズボーン准教授:オックスフォード大学)」

「2011年に小学生になった子供の65%は、将来、現在存在していない職業に就くと予想される。(キャシー・デビッドソン教授:ニューヨーク市立大学)」

現在の状況とは大きく変容する将来の社会では、いまの子ども達がその中心を担っていきます。
このコラムでは、向こう10年を見据えて改訂される学習指導要領において、ICT教育が重要視されるわけと、その効果。さらにICT教育の利用や普及にあたっての課題や問題点を取り上げます。

◆【参考】学校内における感染症予防策として教育ICT活用!◆
3密回避策として、みらいスクールステーションの校内ライブ放送機能に関するお問い合わせを数多くいただいております。以下のページに詳しく紹介していますので、併せてご覧ください。
<新型コロナ感染症拡大防止策としてのみらいスクールステーション導入のご提案>
https://www.mirai-school.jp/station/grant/

未来の社会を生きるのは、今の子供たち

「何を知っているか」から「何ができるようになるか」へ

質問をしたら、ロボットのように単一的な回答で終わってしまう人もいれば、その質問から密度の濃い示唆をもらえる会話にまで発展する人もいます。
 どの仕事場にも幅広い知識を持っている人はたくさんいますが、前者と後者の違いが、これからの時代に求められる資質・能力の違いでもあります。今後、ICT(Information and Communication Technology)がさらに革新し、社会に浸透するほど、前者の能力を必要とする人による仕事は減り、後者への需要が高まることになります。
 今回の学習指導要領の改訂のポイントでは「知識の理解の質を高め資質・能力を育む「主体的・対話的で深い学び」」として、「何ができるようになるか」が明確化されています。「言語能力の確実な育成」や「理数教育の充実」では、単に知識を覚えるだけでなく、「具体と抽象を押さえて考えるなど情報を正確に理解し適切に表現すること」や、「授業内容を維持した上で、日常生活から問題を見出す活動や見通しをもった観察・実験」などの学習の充実と質の向上が挙げられています。

 かつて、インターネットが普及する前の時代は、幅広い知識だけでも持っていれば重宝されたといいます。ところが、今やスマホが手元にあれば、ビジネスのシーンでも同僚や知人との日常会話でも、わからないことがあればその場で即座に調べることができるようになりました。これは、かつて知識を持った人の活躍場面が、スマホというコンピューター(ロボット)に取って代わられているように思えます。
 スマホがあることで即座に必要な知識が得られるから、話題がそこで途絶えてしまうことはなく、その情報が基になって、短時間のうちにさらに突っ込んだ深い会話へと深化していけるわけです。

 将来の社会では、基礎知識を生かして、その先にあるものを追求できる創造性のある人材が求められているのだと思います。そのために、社会に出る前の学校教育の充実が重要視されています。現に教育現場では、プログラミング的思考を育む授業やアクティブラーニングの導入が進んでいます。

待ったなしで時代は進化していく

教育の質の向上を支援する教育ICT機器

 「板書をノートにきれいに書き写し、教科書や教材を丸暗記して、頑張って知識を詰め込んで、テストで高い点数をとれば、将来は社会や地域に貢献できる」というような家庭環境や風習で育ってきた保護者やその上の世代は少なくありません。そんな世代が成人するまでに費やした学習の時間も、いまの子どもたちが使える学習時間の量は同じで、共に限りがあります。同じ学習時間でありながら、一昔前よりも学習の質の向上を実現するために、文部科学省をはじめ有識者が集まって、学習指導要領の改訂の検討が行われてきました。将来の社会構造を見越して、カリキュラムの改善はもちろん、学習環境のサポートや効率化を図る教育ICTの整備と活用までも含めて幅広い視点で検討されています。教育環境の充実を図るために提唱されたスクール・ニューディール構想においても、学校施設のICT化が盛り込まれています。

 前述の「何ができるようになるか」の結論に至るまでには、情報技術を手段として活用する力(情報活用能力)の育成の項目に検討の経緯がわかりやすく記述されています。(参照:「幼稚園、小学校、中学校、高等学校及び特別支援学校の学習指導要領等の改善及び必要な方策等について(答申)【抜粋】/平成28年12月21日 中央教育審議会」)
 端的に要約すると以下のような検討がなされています。

 ・情報活用能力は、情報を手段として活用し、問題の発見や解決、自分の考えをまとめられるようになるために必要な資質・能力
 ・未来を切り拓いていく子どもたちには、情報を主体的に捉え、新たな価値の創造に挑んでいくことがますます重要
 ・スマホやSNSの普及に伴い、トラブルも増大。情報技術が進化していく時代にふさわしい情報モラルを身につけていく必要がある
 ・情報技術を操作して、情報を共有することが社会生活の中で当たり前になっている。小学校段階から文字入力やデータ保存などの技能を習得していくことが求められる
 ・身近なものにコンピュータが内蔵され、生活が便利になっていることを理解し、どの職業につくにしてもプログラミング的思考は普遍的に求められる
 ・社会で生きていくために必要な資質・能力を育むためには、学校の生活や学習においても、日常的にICTを活用できる環境を整備していくことが不可欠

ICT機器を用いた授業の効果は?

 近年、多くの公立学校、私立学校の授業にICT機器の導入が進んでおり、それを取り入れたICT教育が開始されています。
 「教育のICT化に向けた環境整備5か年計画(2018年~2022年度)/文部科学省」では、ICT環境の整備方針で目標とされている水準が公表されました。また、このために必要な経費については、単年度1,805億円の地方財政措置を講じることとされています。

 ・学習者用コンピュータ・・・3クラスに1クラス分程度整備
 ・指導者用コンピュータ・・・授業を担任する教師1人1台
 ・大型提示装置(大型テレビ、プロジェクター、電子黒板)・・・100%整備
 ・超高速インターネット及び無線LAN・・・100%整備
 ・統合型校務支援システム・・・100%整備
 ・ICT支援員・・・4校に1人配置
 ・学習用ツール、予備用学習者用コンピュータ、充電保管庫、学習用サーバ、校務用サーバ、校務用コンピュータやセキュリティに関するソフトウェア

 前述の中央教育審議会の答申では、これらのICTの特性・強みとして以下が挙げられています。
  ①多様で大量の情報を収集、整理・分析、まとめ表現することなどができ、 カスタマイズが容易であること
  ②時間や空間を問わずに、音声・画像・データ等を蓄積・送受信できる という時間的・空間的制約を超えること
  ③距離に関わりなく相互に情報の発信・受信のやりとりができるという、双方向性を有すること

 さて、ICT教育の効果を「未来を切り拓いていける子どもの資質・能力の育成」の観点で評価しようとすると、長い期間での調査が必要になると思われます。また、次期学習指導要領の全面実施も、小学校の2020年度を皮切りに、中学校が2021年度、高校が2022年度です。つまり、本コラム執筆時点では全面実施されていない状況であるため、ICT教育には効果が期待されている段階といえます。実証実験や試行をさらに積み重ねて先進モデルとして体系化されてくると考えられます。

 とはいえ、教育ICT機器単体の学習効果だけを見ると、文科省や総務省、様々な機関で実践モデル校を設置して調査研究がなされています。
 例えばデジタル教科書を投影したり書き込んだりできる電子黒板は、児童生徒の「関心・意欲・態度」が高まるといった効果が顕著に表れています。「デジタル化された教材資料を大きく提示でき、指示も明確になる」「視覚に訴える授業が可能となり、資料説明が伝わりやすく、わかりやすくなる」などがアンケート調査によって明らかにされています。

 みらいスクールステーションは、大型テレビやプロジェクタ、電子黒板と組み合わせて一緒に導入・整備されるケースが増えてきました。従来は、指導用ノートパソコンとのセットが主流でしたが、ノートパソコンは電源の起動時間や周辺機器との接続、端末管理に手間がかかるなど、教育現場での用途に限ってみるとデメリットが顕在化しています。教育ICTの専用端末として開発されたメディアボックスは、すばやい起動と家電感覚で扱えるリモコン操作、さらにタブレット端末の画面転送機能も搭載されていて、教材提示の幅が広がります。導入校の担当者様からは、その利用率の高さに想定外の驚きをいただいており、国語・算数(数学)・理科・社会ほかすべての教科で視聴覚に訴える興味深い活用事例が見られます。また、授業利用だけでなく、校内ライブ放送やデジタルサイネージ機能まで備わっていて同じシステムで連携できるなど、ノートパソコンとの差別化を図っています。

みらいスクールステーションは、以下のページで詳しく紹介しています。是非、チェックしてみてください。
https://www.mirai-school.jp/ict-education/

ICT教育整備の課題と問題点

 教育課程において、ICTの活用が重要とされる一方で、その整備や活用の課題も浮き彫りになっています。ここでは、次の3つの問題点を取り上げます。
 ・ICT整備の地域ごとの格差
 ・ICT整備に対する意識の格差
 ・ICT活用におけるITリテラシーの格差

教育ICT機器整備の地域格差の問題

 ICT機器の整備状況は、地域によって格差が生じています。したがって、子ども達が受けることのできる教育の質にも地域によって差が生じることが予測されます。この事態を早急に改善していくため、文科省では「教育の情報化加速化プラン」をまとめたり、都道府県・市区町村単位で整備状況を年度ごとに公表し、整備を促進するようになりました。
 学校における教育の情報化の実態等に関する調査項目には「学校におけるICT環境の整備状況」と「教員のICT活用指導力」の2種類があります。
 例えば、2022年度までに100%整備が目標となっている無線LAN整備率は、平成29(2017)年度末時点では、都道府県別の全国平均が34.5%、1位が静岡県(68.6%)、最下位が福岡県(9.4%)となっています。学校の各所で日常的にタブレット端末を利用する頻度が増えていくことが予想されるため、タブレットでインターネットやサーバにアクセスできるようにするためにも、無線LAN整備のスピードアップが求められます。同じく大型提示装置の100%整備目標に対しては、この調査データを見る限りでは、普通教室の「電子黒板」整備率として公表されており、電子黒板機能を持たない大型提示装置(テレビやプロジェクター)が含まれているのかどうかなど、実態がつかみにくい状況になっています。電子黒板だけの調査結果でみると、1位が佐賀県(128.8%)、最下位が神奈川県(10.6%)となっています。デジタルテレビが多く導入されている神奈川県内の状況を「大型提示装置の整備率」としてみると、公表されているデータとは異なった実態が見えてくると思われます。

 今後の地域格差の是正には、教育委員会がさらに主体性を発揮し、地方財政措置も生かしながら着実に整備を進めていく必要があります。

(ここから2019年10月追記)
平成31年(2019)年3月時点の整備状況が、文科省から公表されました。
普通教室の無線LAN整備率は、静岡県が1位をキープ(73.6%)、最下位が新潟県(13.3%)でした。全国平均値は40.7%で、1年前の調査時から5.5%上昇しています。この1年で特に伸び率が大きいのが、宮城県(約33%→約53%)、福井県(約33%→約54%)です。
続いて、“大型提示装置”の整備率です。従来は“電子黒板”でしたが、今回から新規調査項目としてプロジェクタ、デジタルテレビ、電子黒板を含めた数値となった模様です。1位が佐賀県(87.1%)で最下位が秋田県(17.3%)です。前回の“電子黒板”調査で最下位だった神奈川県は、大型提示装置調査では約52%で、平均値(51.2%)で中間に位置していることがわかります。

ちなみに、「2019年度全国学力テスト正答率ランキング(都道府県別/小中学生合算)」を見ると、大型提示装置整備率が最下位の秋田県が1位(石川県と同率首位で正答率69.33%)です。そして、佐賀県は同ランキングでは43位(正答率62.33%)という皮肉な状況です。
この結果だけを見ると、「大型提示装置の整備率と学力は相関しない」という実態が見受けられますが、「大型提示装置を整備したら、すぐに学力が上がる」というわけではないため、ICTと学力の相関関係を証明するのであれば、長い期間を通して学力調査していく必要があります。
(ここまで追記)

ICT整備に対する意識格差の問題

 文部科学省や学識者、予算を計上し導入設置者でなる自治体や学校、そしてICT機器を製造・開発・運用する民間企業は、ICT整備を積極的に「推進する側」です。それに対してICT機器を「利用する側」にある教職員、さらには保護者との意識にも格差が生じています。

 公立校の場合は、ICT整備の導入を検討・決定する教育委員会と、ユーザーとなる学校現場の先生では、職場が異なっていることが要因のひとつとして考えられます。学校にICT機器が整備されたけれども、活用方法まで教育委員会と確認できているわけでなく、学校現場に裁量がゆだねられるケースが多いため、困惑を示す先生も多いのではないでしょうか。また、ICT機器活用の本質まで十分に啓蒙していくには、研修会や情報連絡などを介して、多大な時間と労力をかけてきめ細かく実施していく必要があり、この点が意識格差の是正に向けた弊害になっていることも考えられます。
 私立校では、ICTの整備と導入後の利活用まで同じ職場で一体となって検討されるケースも多いとされます。ICTの導入を児童生徒の学力向上だけでなく、職場の業務改善、学校の魅力度向上といった部分にも必要性を見出せた学校では、ICTの整備や活用に意欲的になります。ただし、ICTの必要性を見出せない学校では、当然ICTの整備は後回しになりがちな傾向が見てとれるようになりました。

 では、保護者とICT整備推進側の意識格差を見てみましょう。
 保護者は、ICT整備費用を税金や学費などの形で負担する側にいます。先に述べたとおり、保護者世代はどちらかというと従来型の学校教育方針の環境下で育ってきた割合が高く、お子様の学力向上にICT活用を積極的に求める声は多くない現状が想像できます。むしろ、空調設備の整備や防災防犯対策の強化、安心して子どもを預けられる環境の整備、教師の増員から質や熱意に対する注文まで、ICT環境整備以外に関心が寄せられています。
 また、かつて教科書や教材を丸暗記して良い成績を収めてきた保護者層も多く、授業で学ぶ内容と成績評価の基準、将来の社会が求める人材にも変化が訪れようとしていることを「知る機会が殆どない」点も課題といえます。

 将来の社会を担う子どもの育成には、ICTの整備を加速し、効果的に活用することが欠かせません。そのため、ICT整備を主導していく側が、教職員や保護者へも啓発活動を進めていくことが急務だと思えます。

ICT活用におけるITリテラシーの格差

 学校の先生は業務量が多く、忙しい職種といえるでしょう。「過労死等防止対策白書(2018年度版)」によると、教職員1日当たりの平均勤務時間は、通常期で11時間17分に上っているようです。
 児童生徒が登校してから下校するまで、殆どの時間を職員室のデスクではなく、教室や廊下、体育館やグラウンドで過ごすため、ICTを習得できる環境におかれていない状況にあり、ICT機器を開発する民間企業と先生との間にITリテラシーの格差が生まれているようです。
 ICT機器のユーザーは、学校という空間にいる先生や子どもたちであることを踏まえると、企業が開発・提供する製品も、もっとユーザーにより沿ったものにしていくことが求められます。
 せっかく導入したICT機器なのに殆ど使用していない。操作方法が難しくて、利用にあたってはICTに詳しい一部の先生に聞かなければならない。といった問題点が、ICTが普及するほど浮き彫りになってきています。

まとめ

 このコラムでは、ICT活用が求められる背景と期待される効果を将来の社会像の視点から取り上げ、現状の格差を課題や問題点として記しました。
 「将来の社会環境と、その中心を担う今の子ども達の姿を、社会全体としてリアルに想像する工夫」ができれば、格差問題の解決のスピードが速まっていくのではないかと考えます。

 みらいスクールステーションは、「毎日つかわれる教育ICT」として、国語、算数、理科、社会などの基本の教科を学ぶ授業や校内連絡を強力にサポートするソリューションです。今後も、より良い学びと学校環境づくりを支援し、明るい未来社会の形成に役立つように製品開発を進めて参ります。

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